財団法人 日本紡績検査協会
 
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  試験機器の紹介
   
  ガスクロマトグラフ/質量分析装置(GC/MC)
   
 

20世紀以降、石油化学工業の発展に伴い、化学物質を原料とした生活物資が私たちの生活環境の中に入り込んできました。
それに従って、化学物質の揮発・拡散による室内汚染という新たな問題が発生しています。いわゆるシックハウス症候群と呼ばれるものであります。
シックハウス症候群の原因物質といわれているものにはトルエン、キシレン等の揮発性有機化合物(VOC:volatile organic compounds)があり、これらの物質の定性・定量分析にはガスクロマトグラフ/質量分析(Gas Chromatograph / Mass Spectrometry:GC/MS)が必要不可欠な手段となってきています。
また室内空気の分析のみならず、小形チャンバーを用いて建築材料(合板、壁紙、塗料、接着剤等)から空気中へ放散するVOCを定性・定量する試験(JIS A 1901)においても、使用されている分析手段であります。
現在、ボーケン環境分析試験センターではこのGC/MS装置を使用して分析試験を行っています。

▲図1 ガスクロマトグラフ/質量分析装置
▲図1 ガスクロマトグラフ/質量分析装置

   
  ガスクロマトグラフ/質量分析装置(GC/MC)の原理
  GC/MS装置は2つの装置から構成されています。ガスクロマトグラフ部分(GC)ではそれぞれの化合物の保持時間の差を用いて試料の分離をおこない、質量分析計部分(MS)では分離がおこなわれた成分の検出をおこないます。

試料はまずガスクロマトグラフ部分に導入される。ここではキャピラリーカラムと呼ばれる細長いガラス製の管の中を試料は流れていく。カラム内壁には固定相の処理が施されており、個々の化学物質ごとに固定相との分配平衡定数が決まっていることより分離が可能となる。つまり、固定相に吸着する割合が低い成分ほどカラム内にとどまる時間が短くなる、その結果移動度が大きくなり、反対に吸着する割合が高いほど移動度は小さくなる。その結果出口部分には移動度の大きな成分ほど早い時間に、逆に移動度の小さな成分ほど遅い時間に到達する。また、化合物ごとに移動度が決まっており、この検出時間の差を利用して定性分析をおこなう。
次にGC部分で分離がおこなわれた各成分は質量分析装置に導かれる。質量分析装置には様々なタイプがあるが、基本的には物質固有の質量の差によって分析が行われる点では同じである。その中で、現在ボーケンにて使用している質量分析計は四重極型と呼ばれるものである。これは断面が双曲線の向かい合った電極を2組用意し、それぞれに直流・交流電圧を重畳印加し、この中の空間にフラグメントが導入されると、そのときの条件にあったフラグメントイオンのみ通過することになる。この原理を利用して試料に含まれる化学物質を計測する。

この二つの分析手法を組み合わせることにより、ダイオキシンや有機塩素化合物等の分離検出に有効な測定方法とされている。その理由としては
 1)全イオンクロマトグラフ(TIC)によって、感度よく検出することが可能である
 2)特定質量数の成分のみのクロマトグラフ(SIM)により、バックグラウンドをカットした
   クロマトグラムを測定できるので、SN比(目的物質のシグナルとノイズの比)が非常に良好である。
といった点が挙げられる。

   
  ●試験用途
  現在環境分析試験センターにおいてGC/MS装置を用いた試験方法としては、主に三種類ある。内訳は前述の小形チャンバー法(JIS A 1901)、家具試験(生活用品など)、最後に室内空気濃度測定である。その他の試験においても、揮発性有機化合物濃度の測定をおこなう手段としては非常に有効な手段といえる。
 
▲図2 小形チャンバー
▲図2 小形チャンバー
JIS A 1901では小形チャンバーと呼ばれるステンレス製の容器(図2)を用い、建築材料から空気中へ放散するVOC及びカルボニル化合物の測定をおこなうのだが、その分析装置の一つとして質量分析計付きガスクロマトグラフを使用するよう明記されている。その適用範囲は建築用ボード類、壁紙、カーペット、及びそれらの施工に用いる接着剤等多岐にわたっている。
▲図3 家具試験室
▲図3 家具試験室
家具試験室(図3)では六畳相当の部屋に見立てた空間において、机・ベッド等から放散されるVOCの濃度を測定している。この試験では小形チャンバーに入りきらない大きな試験体が対象になり、実際に室内に家具が運び込まれたときにどの程度の放散量になるかを知る上では有効な手段であると考えられる。
しかし、この試験方法はJIS等で規定されておらず、暫定的であるといえる。
▲図4 室内サンプリング風景
▲図4 室内サンプリング風景

最後に室内空気環境分析(図4)であるが、冒頭に述べた「シックハウス症候群」を対象にした分析手段である。これはVOCが健康被害に影響を及ぼすと疑われていることより、実際の生活空間の空気のサンプリングをおこなうものである。前述の二つの方法が主として単一試料を測定対象とするのに対して、床材・壁紙・造り付け家具等の複合した状態を測定する点では少々異なっている。そのためVOCが検出された場合には原因の特定が出来ない場合が多い。
   
  ●おわりに
 

このようにガスクロマトグラフ/質量分析装置を用いたVOCの定性定量分析は、化学物質が氾濫している今日においては非常に重要な分析手法の一つであることがいえる。また、その優れた汎用性により、今後とも幅広い分野への応用が期待される。

   
   
   
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