獣毛混用率
目的
生地あるいは製品を構成する獣毛繊維の種類や混用率(%)を調べるために行う試験です。試験結果はDNA法の場合は含まれる繊維の名称(定性試験)、ペプチド分析法と顕微鏡法については含まれる繊維の名称とそれぞれの混用率(ペプチド分析法はカシミヤ・羊毛・ヤクの場合に対応)で表されます。
注1:カシミヤとモヘヤの判別は顕微鏡観察によって行います(DNA鑑別法、ペプチド分析法)。
注2:キャメルとアルパカの判別は顕微鏡観察によって行います(ペプチド分析法)。
試験方法
獣毛混用率試験にはペプチド分析法、DNA法、顕微鏡法の3種類の試験方法があります。
①ペプチド分析法
獣毛を構成するケラチンタンパク質のアミノ酸配列が動物種ごとに異なることに着目し、ペプチド(タンパク質を断片化させたもの)を分析することによって獣毛種を判定します。カシミヤ・羊毛・ヤクの3種類についてはMALDI-TOF質量分析計によって検出された動物種に特異的なピークの比率から混用率を算出します(定量試験)。
また、ピークの位置から使用されている毛の種類を判定できるため、ラクーンやタヌキ等の毛皮の鑑別も可能です。
【MALDI-TOF質量分析計】 |
【質量分析スペクトル】 |
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②DNA法
DNA法は獣毛に含まれるDNAの塩基配列を識別し、獣毛種を判定します。微量のDNAを増幅(PCR)させて高感度で分析することが出来ますが、鑑別結果は定性試験となります。
【DNA鑑別の結果】 【DNA鑑別の結果】
カシミヤ100% カシミヤ、羊毛混紡
③顕微鏡法
顕微鏡で繊維種類ごとに繊維の本数と直径を測定し、混用率を算出します。
ミクロトームで裁断した繊維を、流動パラフィンとカバーガラスを用いてスライドガラス上に封入し、観察用試験片とします。顕微鏡で観察し、繊維の種類を鑑別します。その後、顕微鏡でスライドガラス上の繊維を順次観察し、繊維の種類ごとの本数を測定します(全体の本数は1000本又はそれ以上)。次に同様の操作により、繊維の種類ごとにμm単位で直径を測定します(測定本数は繊維の種類ごとに100本又はそれ以上)。測定した繊維種類ごとの本数及び直径から、混用率を算出します。測定は2回行い、その平均値を求めます。
【観察用試験片】
【獣毛試料写真】
カシミヤ 羊毛