フタル酸エステル類について 2016/8/4 フタル酸エステル類とは? プラスチック製品(特にPVC)などを軟らかくするための可塑剤として使用されています。柔軟性を高めるために、なぜフタル酸エステル類が使用されているかといいますと、耐久性、長寿命、低コストなどの利点が多いためです。その中でも、代表的な汎用可塑剤として広く使われていて、フタル酸系の約60%の生産量を占めている物質として、「フタル酸ビス(2―エチルヘキシル)(別称:フタル酸ジ-2-エチルヘキシル、DEHP)」があります。 フタル酸の構造 フタル酸エステル類の代表的な化学構造を図に示します。フタル酸の構造は、以下の図のように、フタル酸部分とアルコール部分に分けることができます。このアルコール部分の構造を変化させることによって、様々なフタル酸エステルを合成することができます。 図 フタル酸ビス(2-エチルヘキシル) フタル酸エステル類は人体に有害なの? フタル酸エステル類は、ヒトへの有害性への懸念から様々な規制を受けています。各国の研究機関で生殖毒性が指摘されていますが、研究結果によって毒性評価に差異があります。一部のフタル酸は発がん性の可能性があるカテゴリーに分類されています。 ※化学的には無数の構造を取るが、実際に規制されるのは法律により数種類。 フタル酸エステル類の種類と用途 フタル酸エステル類は、前述のフタル酸ビス(2-エチルヘキシル)以外にも、様々な種類があります。国内外の規制の対象となるフタル酸エステル類には、以下が存在しています。 名称 略号 用途 フタル酸ジ- 2-エチルヘキシル DEHP 汎用可塑剤 フタル酸ジイソノニル DINP 汎用可塑剤 フタル酸ジブチル DBP 塗料、接着剤 フタル酸ブチルベンジル BBP 接着剤、シーリング剤 フタル酸ジイソデシル DIDP 耐熱電線、レザー フタル酸ジノルマルオクチル DNOP 電線、フィルム (可塑剤工業会H.P. より引用:http://www.kasozai.gr.jp/) フタル酸エステル類に係る規制 フタル酸エステル類は国内においては食品衛生法によって、外国においても特に玩具を中心に規制されています。 フタル酸エステル類に係る規制について紹介します。 欧米日のフタル酸エステル類規制について 国名DEHP・DBP・BBPDINP・DIDP・DNOPEUDirective2005/84/EC*1(2005)●おもちゃ・育児用品に使用禁止●おもちゃは14歳未満が対象●規格値0.1%●子供により口に入れる可能性がある(1辺でも5cm未満のあるもの)おしゃぶり●育児用品に使用禁止●規格値0.1%USACPSIA(2008)●恒久的に禁止●12歳以下の子供が口に含む可能性がある玩具又は3歳以下の子ども向け育児用品●基準値≤0.1% ●暫定的に禁止●12歳以下の子供が口に含む可能性がある玩具又は3歳以下の子ども向け育児用品●基準値≤0.1% 国名DEHP・DBP・BBPDINPDIDP・DNOP日本食品衛生法 第18条昭和34年厚生省告示第370号(食品・添加物等の規格基準)第4 ●乳幼児が口に接触することをその本質とするおもちゃで、乳幼児が口に接触することを本質とする部分●乳幼児が口に接触することをその本質とするおもちゃで、乳幼児が口に接触することを本質としない部分―●乳幼児が口に接触することをその本質としない部分―*1 Directive 1999/815/ECにより暫定規制とされ、2005/84/ECで恒久規制とされた。(塩ビ工業・環境協会 H.P.より引用 http://www.vec.gr.jp/)参考文献>1)化学大辞典大木道則他 編 ㈱東京化学同人 発行 1989年10月2)化学物質の初期リスク評価書ver1.0 No.7 フタル酸ビス(2-エチルヘキシル)(独)製品評価技術基盤機構 2005年 5月3)可塑剤工業会 H.P.http://www.kasozai.gr.jp/4)塩ビ工業・環境協会 H.P.http://www.vec.gr.jp/5)食品衛生小六法Ⅰ(法令) 平成22年版食品衛生研究会 編 新日本法規出版 発行 平成21年10月23日