亜麻(リネン)・苧麻(ラミー)・大麻(ヘンプ)について
衣料品に主に使われている麻の繊維と言えば、亜麻(リネン)、苧麻(ラミー)、大麻(ヘンプ)の三つです。麻は植物の茎のじん皮部から採取される植物繊維で、主成分はセルロースです。麻は吸湿性が高く、肌に触れたときに涼しく感じるので、春夏物衣料に多く使用されています。
亜麻(リネン)について
亜麻とは、亜麻(Linum usitatissimum)の茎からの繊維のことをいいます。
亜麻は亜麻科の一年生で、その植物の靱皮から採った繊維をフラックスといい、フラックスで作った糸や布をリネンといいます。フランス語ではラン(Lin)、イタリア語ではリノ(Lino)、ドイツ語ではライネン(Leinen)といいます。
亜麻は亜麻科の一年生で、その植物の靱皮から採った繊維をフラックスといい、フラックスで作った糸や布をリネンといいます。フランス語ではラン(Lin)、イタリア語ではリノ(Lino)、ドイツ語ではライネン(Leinen)といいます。
原産地
コーカサスから中近東といわれています。紀元前6000~5000年頃に栽培がはじまりました。中国、インドへ伝わり日本には、1690年(元禄3)に渡来し栽培されました。
栽培条件
亜麻は亜寒帯に適した栽培植物であり、比較的寒い地方で湿気が多く、排水の良い土壌で良質の繊維用亜麻が育ちます。生育期には月平均60~80mmの降雨があること、収穫時期には雨の少ないことがよいとされています。
特 徴
長所 | 短所 |
清涼感: 天然繊維や化学繊維の中で熱伝導性に優れ、体熱を外部へ伝える力が大きい。 |
染色性: 麻は綿と同様の染料が使用されるが、結晶領域が密なため、濃色品は鮮明に染まり難く均一な染色が難しい。場合によっては未染着部分ができてしまう問題が発生する。 |
引張り強度が大きい: 綿と比べ繊維が長いので撚りあわせが容易であり、繊度・繊維長の分布が広く引張り強度が大きい。特に湿潤時に強力が増し耐久性に富む。 |
収縮・変形し易い: 麻は親水性なので水洗いすると吸収して膨潤・収縮が生じる。ニット製品では糸の撚りのトルクが洗濯により緩和され斜行が出来易い。 |
剛性を持つ: 高度に発達した微細構造をもち、綿に比べ重合度、結晶化度、配列度が大きいことから強度は大、伸度は小、ヤング率が大きく剛直であり「張り」「シャリ感」を与える。 |
皺がつき易い: ヤング率が大きく、伸長弾性回復が小さいため皺がつき易い。糸の太さ・撚り数・加工条件が関係し、特に洗濯による機械的作用が加わると皺が残る。 |
水を含むと膨潤する: 水の中で膨潤するのは繊維内部に線状分子の結晶化や配向があるため、長さ方向に伸びにくく幅方向に膨潤する。 |
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亜麻の繊維鑑別時の特徴
繊維名 | リネン(亜麻) | 英字名 | |
Linen | |||
顕微鏡観察 (200倍) |
側面の形状 | 繊維軸方向に線条が走り、所々に節がある。 先端は鋭い。 繊維束も見られる。 |
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断面の形状 | 多角形で中空部分がある。 | ||
よう素よう化カリウムによる着色 | 淡く薄茶に着色するが、時間経過と共に消失する。 | ||
BOKENSTAINⅡによる着色 | 錆浅葱 (灰みの青緑) | ||
燃焼試験 | 燃焼状態 | 炎に触れると直ちに燃える。(非常に速やかに燃える) 残照がある。 |
|
臭 | 紙の燃える臭い。(綿とはやや異なる) | ||
灰 | 非常に小さく柔らかい灰色。 | ||
主な試薬による溶解性 | 70%硫酸、酸化銅アンモニア溶液に溶解する。 | ||
繊維中の塩素の有無 | 無 | ||
繊維中の窒素の有無 | 無 | ||
主な脱色方法 | ハイドロサルファイトナトリウム水溶液(煮沸) | ||
次亜塩素酸ナトリウム溶液(常温) |
苧麻(ラミー)について
苧麻とは、ちょ(苧)麻(Boehmeria nivea, Boehmeria tenacissima)の茎からの繊維のことをいいます。
イラクサ科の多年生の草木類です。苧麻は2種類に大別され、1種は葉の裏に白毛を密生する白葉苧麻種であり、もう1種は葉の裏に毛は無い緑葉苧麻です。古くから「からむし」「まお」「からそ」と呼ばれており越後上布、小千谷縮、能登上布、近江上布、 奈良晒布、宮古上布、八重山上布などと称され愛好されていました。大正時代に中国から多量輸入され品種改良されるようになってから「苧麻」と呼ばれるようになりました。
イラクサ科の多年生の草木類です。苧麻は2種類に大別され、1種は葉の裏に白毛を密生する白葉苧麻種であり、もう1種は葉の裏に毛は無い緑葉苧麻です。古くから「からむし」「まお」「からそ」と呼ばれており越後上布、小千谷縮、能登上布、近江上布、 奈良晒布、宮古上布、八重山上布などと称され愛好されていました。大正時代に中国から多量輸入され品種改良されるようになってから「苧麻」と呼ばれるようになりました。
原産地
原産地は東南アジアといわれ現在の主産地は中国、マレー、フィリピン、ブラジルである。ラミーもリネンと同じく古くから使われており、日本では福井県の遺跡から縄文初期のものが発見されている。
栽培条件
多照で温暖な気候条件と湿潤な土地、耕土を深くとれる事が必要である。草丈1~2.5mに伸び、茎は通常1.5~2.0mに伸育する。
特 徴
1.天然繊維の中で最もシャリ感がある:繊維は硬く張り・コシがつよくシャリ感があり、汗ばんでも 肌に密着せずベトつかない。
2.通気性が優れている:多少粗く織っても、繊維のコシがつよいため、織糸が滑脱しにくく通気性に 優れた織物が作れる。
3.吸湿、放湿性に優れている:汗を素早く吸収し放出するため気化熱を奪い涼しい。
4.洗濯性:強い洗いにも耐え洗濯で汚れが落ちやすく、清潔さが保持できる。又、水に濡れると繊維 強力が向上するので洗濯回数の多い夏期に適している。
※苧麻の代表的な欠点:繊維が粗硬なので肌をチクチク刺激する。
2.通気性が優れている:多少粗く織っても、繊維のコシがつよいため、織糸が滑脱しにくく通気性に 優れた織物が作れる。
3.吸湿、放湿性に優れている:汗を素早く吸収し放出するため気化熱を奪い涼しい。
4.洗濯性:強い洗いにも耐え洗濯で汚れが落ちやすく、清潔さが保持できる。又、水に濡れると繊維 強力が向上するので洗濯回数の多い夏期に適している。
※苧麻の代表的な欠点:繊維が粗硬なので肌をチクチク刺激する。
苧麻の繊維鑑別時の特徴
繊 維 名 | 麻(苧麻・ラミー) | 英字名 | |
Ramie | |||
顕微鏡観察 (200倍) |
側面の形状 | 繊維軸方向に線条が走り、所々に節がある。 先端は鈍角である。 |
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断面の形状 | へん平な楕円形で中空部分がある。 | ||
よう素よう化カリウムによる着色 | 淡く薄茶に着色するが、時間経過と共に消失する。 | ||
BOKENSTAINⅡによる着色 | 錆浅葱 (灰みの青緑) | ||
燃焼試験 | 燃焼状態 | 炎に触れると直ちに燃える。(非常に速やかに燃える) 残照がある。 |
|
臭 | 紙の燃える臭い。(綿とはやや異なる。) | ||
灰 | 非常に小さく柔らかい灰色。 | ||
主な試薬による溶解性 | 70%硫酸、酸化銅アンモニア溶液に溶解する。 | ||
繊維中の塩素の有無 | 無 | ||
繊維中の窒素の有無 | 無 | ||
主な脱色方法 | ハイドロサルファイトナトリウム溶液(煮沸) | ||
次亜塩素酸ナトリウム溶液(常温) |
大麻(ヘンプ)について
大麻とは、桑科の1年生で、雌雄異株の双子葉植物のことをいいます。「麻」という言葉は、日本では古くから大麻のことを指しています。広い意味では、大麻に類似した繊維を取る植物やその繊維のことをいいます。
原産地
中央アジアと考えられ、現在では世界各地に分布している。現在の主産地は中国、ロシア、ルーマニア。最も古いもので縄文時代の鳥浜遺跡(約1万年前)から大麻繊維や種子が発見されている。
栽培条件
ヨーロッパでは、冬に植えられることが多い。大麻と輪作すると害虫や病気の発生が少なくなると共に地力が上がり収穫量も増えると言われている。
特 徴
長所 | 短所 |
ラミーやリネンよりシャリ感があり、肌触りが涼しい。 | 太い短いのバラツキが多い繊維なので、紡績して糸にするのが難しい。 |
繊維構造が中空のため、吸湿、吸汗性がある。 | 粗硬な素材なので、糸ネップやスラブが生じやすい。 |
引張り強度で綿の8倍、耐久性で4倍の強度を持つ。 | ― |
通気性に優れている。 | ― |
大麻の繊維鑑別時の特徴
側面観察の特徴: 繊維軸方向に線条が走り、等間隔の節がある。
断面観察の特徴: 楕円形、多角形で中空部分がある。
断面観察の特徴: 楕円形、多角形で中空部分がある。