安全靴、作業靴の性能試験(JIS T 8101、JIS T 8107、JIS T 8108)
目的
労働安全衛生規則第558条において、「事業者は、作業中の労働者に、通路等の構造又は当該作業の状態に応じて、安全靴その他の適当な履物を定め、当該履物を使用させなければならない。」及び2項として、「前項の労働者は、同項の規定により定められた履物の使用を命じられたときは、当該履物を使用しなければならない。」とあります。この「適当な履物」を定めるにはその作業に必要な性能を満たしている必要があります。作業用の靴にはつま先に硬質の先芯を装着し、つま先部の防護性能をもつ「安全靴」と、つま先に硬質の先芯を装着しないが、各種作業用途に対応した性能をもつ「作業靴」などがJIS規格に制定されています。
ボーケンでは安全靴、作業靴について「耐衝撃性」「耐圧迫性」「耐踏抜き性」「かかと部の衝撃エネルギー性」などの各種性能試験を行っております。
耐衝撃性(JIS T 8101、JIS T 8107)
耐衝撃性は、つま先に重量物が落下した際に着用者のつま先を保護する性能について評価する試験です。
試験方法
靴のつま先部分の先芯の後端から後方に約30mmの面に沿って切断したものを試料とします。
試料の中底と先芯のアーチとの間に直径約20mmの円柱状の油粘土を挿入し、先芯部に質量20kgの鋼製ストライカを作業区分により決められた高さから自由落下させた後、油粘土を取り出して最低部の高さを測定します。この高さを先芯と中底との隙間として、基準以上の隙間が確保できているかを確認します。
耐衝撃性試験条件
作業区分による種類 | 記号 | 衝撃エネルギー(J) | 落下高さ(㎝) |
超重作業用 | U | 200±4 | 102 |
重作業用 | H | 100±2 | 51 |
普通作業用 | S | 70±1.4 | 36 |
軽作業用 | L | 30±0.6 | 15 |




耐衝撃性試験
要求性能
靴のサイズ(㎝) | 先芯と中底との隙間(mm) | 靴のサイズ(㎝) | 先芯と中底との隙間(mm) |
23以下 | 12.5以上 | 26~27 | 14.0以上 |
23.5~24.5 | 13.0以上 | 27.5~28.5 | 14.5以上 |
25~25.5 | 13.5以上 | 29以上 | 15.0以上 |
耐圧迫性(JIS T 8101、JIS T 8107)
耐圧迫性は、つま先が重量物で押し付けられた際に着用者のつま先を保護する性能について評価する試験です。
試験方法
靴を下図の様な形状に切り取ったものを試料とします。
試料の先芯の最高部が試験装置の力をかける軸上にくるように試料を台盤に載せ、中底と先芯のアーチとの間に直径約20mmの円柱状の油粘土を挿入し、作業区分により決められた圧迫力になるまで徐々に加圧させた後、油粘土を取り出して最低部の高さを測定します。この高さを先芯と中底との隙間として、基準以上の隙間が確保できているかを確認します。
耐圧迫性試験条件
作業区分による種類 | 記号 | 圧迫力(kN) |
超重作業用 | U | 15±0.1 |
重作業用 | H | |
普通作業用 | S | 10±0.1 |
軽作業用 | L | 4.5±0.04 |



耐圧迫性試験
要求性能
耐衝撃性試験と同様
耐踏抜き性(JIS T 8101、JIS T 8107、JIS T 8108)
耐踏抜き性は、鋭利なものが靴の表底を貫通して足裏に怪我を負うことを防ぐ性能について評価する試験です。
試験方法
- 金属製踏抜き防止板を装着した靴の場合
靴底から甲被部分を取り除いたものを試料とします。
試験用くぎを靴底に垂直に立てた状態から10±3mm/minの速度で圧迫力を加え、くぎが靴底を貫通するまでの最大力を測定します。 - 非金属製踏抜き防止板を装着した靴の場合
(1)と同様に試料を試験装置に設置し、10±3mm/minの圧迫速度で1100Nに達するまで圧迫力を加えます。
その後、くぎの先端が靴底を完全に貫通していないことを確認します。



耐踏抜き性試験
要求性能
踏抜き防止板の種類 | 要求性能 |
(1)金属製 | 貫通力は1100N以上でなければならない。 |
(2)非金属製 | 1100Nにて貫通してはならない。 |
かかと部の衝撃エネルギー吸収性 (JIS T 8101、JIS T 8107、JIS T 8108)
かかと部に加わる衝撃を靴底などに吸収させ、脚への負担を軽減させる性能について評価する試験です。
試験方法
完成品の靴を試料とします。
圧迫ジグが試料の内側からかかとの中心に当たるように設置し、10±3mm/minの速度で圧迫力を加え、50Nから5kNまでの力に対する仕事(吸収エネルギー)を1J単位で記録します。
圧迫ジグの寸法 (mm)
試料 | ジグの長さ L | ジグの幅(半円の直径) W |
サイズ24.5㎝以上 | 71±0.5 | 61±0.5 |
サイズ24㎝以下 | 57±0.5 | 54±0.5 |



かかと部の衝撃エネルギー吸収性試験
要求性能
衝撃エネルギー吸収性が20J以上でなければならない。