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試験方法から探す

吸水速乾性(温度適応型蒸散性試験)

目的

温度依存性のある吸汗速乾加工剤を評価する試験方法で、低い環境温度と高い環境温度の2条件で吸汗速乾性能を測定します。この温度依存性のある吸汗速乾加工剤とは環境の温度によって加工剤のポリマーの構造が変化し、温度が低い条件下ではポリマーが水を蓄え、温度が高い条件下では水を拡散(放出)する性能があります。つまり、着用している衣服の温度が上がると、吸汗速乾性能が向上する加工剤です。

試験方法

生地の吸水性を①滴下試験で測定し、②温度適応型蒸散性試験で温度適応型蒸散性能(Performance)を測定します。

①滴下試験:Wetting Drop Test(AATCC TM 79)

200mm×200mmの試験片に10mmの高さから水を一滴滴下し、水滴の鏡面反射が消えるまでに要した時間をストップウォッチ又はタイマーで計測します。

②温度適応型蒸散性試験:Adaptive Evaporation Test


温度適応型蒸散性試験装置

肌を想定したReferenceろ紙(直径70mm)に3gの水を滴下し、生地(直径140mm)を載せます。試験片を平らに固定し、初期質量を測定します。 試験体を回転台の上に置き、 試験環境にて15分間放置します。 15分間放置後、質量を測定し、Referenceろ紙および試料の水の蒸散率を算出します。

試験環境:低い環境温度(20℃/65%RH)
高い環境温度(35℃/30%RH)


試験中の試料の様子

評価基準値

①滴下法の評価基準値

使用用途

組成の例

湿潤時間(秒)

スポーツ用

ポリエステル、ナイロン及び

それらのウレタン混用

5秒以下

一般用

綿又は綿混

10秒以下

②温度適応型蒸散性能の評価基準値

使用用途

組成の例

P値(%)

スポーツ用

ポリエステル、ナイロン及び

それらのウレタン混用

80%以上

一般用

綿又は綿混

40%以上

試験結果例

温度依存性のある加工剤の加工・未加工の生地を用いて測定を行いました。

試料

B(%)

Condition1

C(%)

Condition2

D(%)

(Difference)

P(%)

(Performance)

加工生地

175

595

420

144

未加工生地

111

394

283

Reference

100

374

274

Condition1:20℃/65%RH Condition2:35℃/30%RH Time:15min

B(%)の値は、低い環境温度条件(20℃/65%RH)での蒸散率を表しています。

C(%)の値は、高い環境温度条件(35℃/30%RH)での蒸散率を表しています。

→BとCの値が大きいほど蒸散性能は高い=試料が肌側面の水を吸水し、表側面から水を多く放出することを示しています。

D(%)の値は、高い環境温度条件と低い環境温度条件での蒸散率の差を表しています。

→Cの値が大きくBの値が小さい場合に値が大きくなります。

P(%)の値は、温度依存性のある蒸散率を総合的に評価する値で、『温度適応型蒸散性能』を表しています。Pの値が大きいほど、温度に依存にした蒸散性能が高い(高い環境温度では蒸散性能が高く、低い環境温度においては蒸散性能を抑制)ことを示します。

※Referenceろ紙は肌を想定した蒸散率を表しています。