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法律・表示等の知識を学ぶ

樹脂加工における発生

ホルムアルデヒドは、繊維製品の製造・加工・機能付加に当たって非常に多く使われてきた化学物質ですが有害性も有しております。では、どのような有害性を持つのかを考えてみましょう。

背   景

ホルムアルデヒド①では、ホルムアルデヒドの有害性と規制について書かせていただきました。
本稿では、繊維製品に多用される樹脂加工剤および糊剤1),2)について、ホルムアルデヒドの放出という観点から少し詳しく述べてみたいと思います。

樹脂とは

またまた化学のお話をさせていただきますが、ご容赦ください。樹脂とは、ポリマーと呼ばれる化学物質の一種です。ポリマーとは、モノマーと呼ばれる小さい分子がたくさんつながって、非常に大きい分子量を持った化合物です3)。例えば、私たちの身近では、たんぱく質やプラスチック、合成繊維もポリマーの一種で、接着剤にもポリマー系のものが存在します。
尿素ホルムアルデヒド樹脂(以下ユリア樹脂)を例にしてポリマー構造を見ると、図のようにモノマーである尿素分子とホルムアルデヒド分子が交互にたくさんつながっている様子が見られます。では、ホルムアルデヒドを介する樹脂の化学反応とはどんなものでしょうか。ユリア樹脂を例として見てみましょう。

ユリア樹脂は、次のような化学反応をします4)

式中のH2N-△-NH2は尿素分子、◎=Oはホルムアルデヒド分子です。それぞれがモノマーとして、どんどんつながっていくことでポリマーであるユリア樹脂が作られます。式の中で水分子(H2O)が取れて反応が進行していることがわかります。このような反応を脱水縮合と呼び、この反応が後のホルムアルデヒドの放出の時に重要な反応となります

ホルムアルデヒドの放出

縮合反応で水分子が取れることで反応が進むことを先に示しました。しかしながら、この反応は一方方向に進むのではなく、逆向きにも進行します。このような反応を可逆反応と呼びます。
私たちの身の回りの空気中には、水分子が多数存在しています(いわゆる湿気)。この水分子がユリア樹脂と反応することにより、樹脂の分解(このような反応を加水分解と呼びます)が生じ、その結果ホルムアルデヒドが放出されると考えられております。この反応の厄介なところは、樹脂が存在する限り進行することです。つまり、接着剤や防しわ性を付与するための樹脂として使用した場合は、継続してホルムアルデヒドを放出し続けることになります。
このような樹脂を用いた場合は、水洗いでは根本的にはホルムアルデヒドを取り除けませんので、ご注意ください。

参考文献>
1) 染色仕上加工技術 (株)地人書館 1991年1月
2) ボーケンセミナーテキスト3 染色・仕上加工 (財)日本紡績検査協会 2004年6月
3) 化学大辞典 ㈱東京化学同人 1989年10月
4) 基礎高分子化学工業 (株)朝倉書店 1995年3月