おもちゃ(及び金属アクセサリー)の規格試験
概要
おもちゃの規格試験は、①材質ごとの溶出試験、②可塑化された材料(ポリ塩化ビニル、ゴム、ポリウレタン)のフタル酸エステル類の材質試験、③塗膜3元素(カドミウム、鉛、砒素)の試験、④おもちゃの製造基準の着色料試験に分かれます。すなわち、おもちゃの素材や色別に①、②の試験を行い、塗装されていれば、その色ごとに③の試験も行い、おもちゃ全体で④の試験も行う必要があります。

この試験対象のおもちゃ「指定おもちゃ」とは、乳幼児(6歳未満)が接触することにより健康を損なうおそれがあるものとして厚生労働大臣の指定したものであり、対象のおもちゃは下記3項目です。
(1)乳幼児が口に接触することをその本質とするおもちゃ
おしゃぶり、歯がため、ほおずき、ふくれんぼ、シャボン玉の吹き出し具、吹き戻し、口紅の形をしたおもちゃ、おもちゃの吹奏楽器類(ラッパ、笛、ハーモニカ等)など |
(2)アクセサリーがん具(※1)、うつし絵、起き上がり、おめん、折り紙、がらがら、知育がん具(※2)、つみき、電話がん具、動物がん具、人形、粘土、乗物がん具、風船、ブロックがん具、ボール、ままごと用具
※1: 乳幼児がアクセサリーとして用いるがん具
指輪、ネックレス、ブローチ、ペンダント、ティアラなどの髪飾り、イヤリング、ブレスレット、アンクレット(キーホルダー、携帯のストラップ等おもちゃとして遊ぶことを目的としないものは含まない。) |
※2: 乳幼児の知的能力を中心とする心身の発育を促進することを目的とするがん具、又は、それに資すると考えられるがん具4)
・玉おとし(玉が転がり落ちる動きや音で遊ぶおもちゃ)及びこれに類するおもちゃ ・輪投げ遊び等、単純なルールのゲーム用具 ・フエルト製の的と先端にマジックテープがついたダート(投げ矢)からなるダーツ遊びおもちゃ、プラスチック製の的と先端に吸盤がついたおもちゃの矢及び弓のセット ・水鉄砲、銀玉鉄砲、空気鉄砲及びこれらに類するおもちゃ ・ちゃんばら遊び用のおもちゃの刀、手裏剣など ・アニメなどの登場人物が持っている小道具をかたどったおもちゃ(変身ブレスレット、武器類など) ・大工、医者などの職業のまねごとをして遊ぶおもちゃ(大工道具、診療器具等をかたどったおもちゃ) ・手品のまねごとをして遊ぶおもちゃ ・おめかしバッグ(おもちゃのおめかし道具を収めたもの) ・マイクをかたどったおもちゃ ・パソコンをかたどったおもちゃ ・家をかたどった箱庭に家具のミニチュアを並べて遊ぶおもちゃ(指定おもちゃの人形や動物がん具と組み合わせずに遊ぶもの) ・蛍光を発するスティックで、暗所でペンライトのように振ったり、ヘアバンドのように頭にはめて遊ぶおもちゃ ・サングラスや眼鏡の形態をしたおもちゃ ・望遠鏡や双眼鏡の形態をしたおもちゃ ・砂場遊び用具(おもちゃのシャベル・スコップ、くまで、こて・へら、ふるい・ざる、バケツ・カップ、じょうろ、じょうご、型抜き等のほか、砂を流して回す羽根車など) ・風呂場で遊ぶおもちゃ(おもちゃのじょうろ、水車、噴水など) ・恐竜等の骨格をかたどった組合せパズル等、難易度の低いパズル用具 ・ひも通し(多数の孔のあいた盤にひもを通して絡ませ、形や模様を作って遊ぶおもちゃ)及びこれに類するおもちゃ ・数字やアルファベットをかたどった木製ブロック ・指定おもちゃのつみき、ブロックがん具に含まれない組立ておもちゃ(木の幹をかたどったポールに、枝や葉に見立てたリング状の部品を積み上げていくものなど) ・蒔き絵を作って遊ぶおもちゃ(粉と蒔き絵盤のセット。なお、工作材料・手芸材料で、乳幼児がおもちゃとして遊ぶためのものと認識されない態様で販売等されるものは含まれない。) ・合成樹脂製のシートで、折り紙のように折って遊ぶおもちゃ 等 |
(3)上記(1)、(2)のおもちゃと組み合わせて遊ぶおもちゃ
電車のおもちゃと付属するレール・駅舎・踏切・トンネルや樹木、人形と組み合わせて遊ぶ家・家具・食器、粘土と型抜き・ヘラ、ボールとバット・グローブ(野球セット)等 |
なお、下記のようなおもちゃは、乳幼児用であっても食品衛生法の対象外です。
・揺りかご、ベッド、乳母車等乳幼児が入る機材(付属しているおもちゃは除く) ・乳幼児の手の届かない高さに設置することが明確なメリー等 |
試験方法
A.うつし絵(着色されている部分)
項目 | 規格 | 溶出条件 | |
溶出 | 重金属 | 試験液は比較標準液の呈する色より濃くてはならない | 水 40℃×30分 |
ヒ素 | 試験液の色は標準色よりも濃くてはならない |
B.折り紙
項目 | 規格 | 溶出条件 | |
溶出 | 重金属 | 試験液は比較標準液の呈する色より濃くてはならない | 水 40℃×30分 |
ヒ素 | 試験液の色は標準色よりも濃くてはならない |
C.ゴム製おしゃぶり
項目 | 規格 | 溶出条件 | |
材質 | カドミウム及び鉛 | 試験液は標準溶液の吸光度より大きくてはならない | - |
溶出 | フェノール | 試験液は標準溶液の吸光度より大きくてはならない | 水 40℃×24時間 |
ホルムアルデヒド | 試験液は対象液の呈する色より濃くてはならない (4μg/ml以下) | ||
亜鉛 | 試験液は標準溶液の濃度より大きくてはならない | ||
蒸発残留物 | 40μg/ml以下 | ||
重金属 | 試験液の色は標準色よりも濃くてはならない | 4%酢酸 40℃×24時間 |
D.おもちゃの塗膜※3
項目 | 規格 | 溶出条件 | |
抽出 試験 | カドミウム | 75μg/g 以下 | 0.07mol/l 塩酸 |
鉛 | 90μg/g 以下 | ||
ヒ素 | 25μg/g 以下 |
※3 色ごとに10㎎未満しか削り取られなかった場合は、検査不要
E.ポリ塩化ビニルを用いて塗装された塗膜※4
項目 | 規格 | 溶出条件 | ||
材質 | ①乳幼児が口に接触することをその本質とするおもちゃで、乳幼児が口に接触することを本質とする部分 フタル酸エステル6種類 ②乳幼児が口に接触することをその本質とするおもちゃで、乳幼児が口に接触することを本質としない部分 フタル酸エステル4種類 ③乳幼児が口に接触することをその本質としない部分 | 各0.1%以下 | - | |
抽出 試験 | カドミウム | 75μg/g 以下 | 0.07mol/l塩酸 37℃×1時間振とう +37℃×1時間静止 | |
鉛 | 90μg/g 以下 | |||
ヒ素 | 25μg/g 以下 | |||
溶出 | 過マンガン酸カリウム消費量 | 50μg/ml 以下 | 水 40℃×30分 | |
蒸発残留物 | 50μg/ml 以下 |
※4 ポリ塩化ビニル塗膜部分の表面積が1個あたり12.5㎠未満の場合は、溶出試験は不要
F.ポリ塩化ビニルを主体とする材料を用いて製造された部分(塗膜を除く)※5
項目 | 規格 | 溶出条件 | ||
材質 | ①乳幼児が口に接触することをその本質とするおもちゃで、乳幼児が口に接触することを本質とする部分 フタル酸エステル6種類 ②乳幼児が口に接触することをその本質とするおもちゃで、乳幼児が口に接触することを本質としない部分 フタル酸エステル4種類 ③乳幼児が口に接触することをその本質としない部分 | 各0.1%以下 | - | |
溶出 | カドミウム | 標準溶液の吸光度より大きくてはならない | 水 40℃×30分 | |
ヒ素 | 吸収液の色は標準色よりも濃くてはならない | |||
重金属 | 比較標準液の呈する色より濃くてはならない | |||
過マンガン酸カリウム消費量 | 50μg/ml 以下 | |||
蒸発残留物 | 50μg/ml 以下 |
※5 ポリ塩化ビニル部分の表面積が1個あたり19.5㎠未満の場合は、溶出試験は不要
G.可塑化された材料からなる部分(塩化ビニルを除く)※6
項目 | 規格 | 溶出条件 | |
材質 | フタル酸エステル 3種類 | 各0.1%以下 | - |
※6 合成樹脂パーツを10検体分集めても試験の必要量が確保できない場合は検査不要
当該部分が塗膜の場合は塗膜の検査も必要、色ごとに10mg未満(10個で100mg未満)しか削り採れなかった場合は検査不要。
H.乳幼児が口に接触することをその本質とする部分の可塑化された材料からなる部分(塩化ビニルを除く)※7
項目 | 規格 | 溶出条件 | |
材質 | フタル酸エステル 6種類 | 各0.1%以下 | - |
※7 合成樹脂パーツを10検体分集めても試験の必要量が確保できない場合は検査不要
当該部分が塗膜の場合は塗膜の検査も必要、色ごとに10mg未満(10個で100mg未満)しか削り採れなかった場合は検査不要。
I.ポリエチレンを主体とする材料を用いて製造された部分(塗膜を除く)※8
項目 | 規格 | 溶出条件 | |
溶出 | 過マンガン酸カリウム消費量 | 10μg/ml 以下 | 水 40℃×30分 |
ヒ素 | 吸収液の色は標準色よりも濃くてはならない | ||
重金属 | 比較標準液の呈する色より濃くてはならない | ||
蒸発残留物 | 30μg/ml 以下 |
※8 ポリエチレン部分の表面積が1個あたり14.5㎠未満の場合は、溶出試験は不要
J.金属製のアクセサリー玩具のうち乳幼児が飲み込むおそれのあるもの※9
項目 | 規格 | 溶出条件 | |
抽出試験 | 鉛 | 90μg/g 以下 | 0.07mol/l塩酸 37℃×2時間静止 |
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図1 |
※9 図1に示した寸法を持つ容器内に圧縮しない状態で置いた時に、当該容器内に収まる大きさのもの
K.おもちゃの製造基準※10
項目 | 規格 | 溶出条件 | |
溶出 | 着色料の溶出 | 着色料の溶出が認められてはならない | 水 40℃×10分 |
※10 化学的合成品たる着色料を使用する場合は,食品衛生法施行規則別表第1に掲げる着色料以外の着色料を使用してはならない。
ただし、上記の試験法による試験に適合する場合はこの限りでない。