ヒ素 2015/7/11 重金属類には有害性を有する物質が多く、そのため様々な形で規制されています。ここでは、それぞれの重金属の有害性と法規制について広く紹介することで、 重金属類について、理解を深めていただければと考えています。 ヒ素とは ヒ素(砒素)とは、元素記号Asで表わされる灰色の金属です。 ヒ素という金属については、皆様もニュース等でお聞きになったことがあるかと思いますが、ヒ素の化合物は非常に強い毒性を持っており、それゆえ、最大の用途は農薬や殺虫剤等とされています。また、その他の用途として、銅や鉛の耐食性を高めるために、これらに添加して合金として用いることもあるようです。1)以下、ヒ素の有害性等について考えてみましょう。 ヒ素の病理 では、ヒ素中毒といった物はどのような症状を示すのでしょうか?またまた、病理学の教科書を紐解いてみましょう。 ヒ素については急性中毒と慢性中毒があり、急性中毒では、中枢神経系毒性が原因となって死に至ると記述されています。また、慢性毒性では、倦怠感や疲労感から始まり、胃腸の障害、皮膚の変化や末梢神経障害による知覚異常、運動麻痺等が表れるとされています。2)この様に、ヒ素には強い毒性があることが分かります。 ヒ素に係る法規制等 ヒ素に係る法規制は非常に厳しく設定されています。 ヒ素に係る主な規制として、「水質汚濁防止法」において、ヒ素が「0.1mg/L以下」3)、ヨーロッパの玩具の安全性試験(EN71-3)において、「25mg/kg」など、非常に厳しい規制がかけられています。また、食品衛生法においても規制がかけられており、おもちゃの種類ごと等にその規格基準が定められています。4) 主なヒ素規制関係法令と基準 法令・基準名 規制対象物質 基準値 環境基本法・環境基準3)河川・湖沼水等 ヒ素 0.01mg/L以下 水質汚濁防止法・排水基準3)工場排水等 ヒ素及びその化合物 0.1mg/L以下 土壌汚染対策法・ 土壌環境基準5)土壌 ヒ素 検液1Lにつき0.01mg以下 農用地 土壌1kgにつき15mg未満 食品衛生法4)(例)おもちゃの塗膜 ヒ素 25μg/g以下 玩具の安全性(EN71-3)6)ヨーロッパ基準玩具 As 25mg/kg 労働安全衛生法作業環境評価基準7) ヒ素及びその化合物 ヒ素として0.003mg/m3 廃棄物の処理および清掃に関する法律8) ヒ素又はその化合物 検液1Lにつき0.3mg以下試料につき0.15mg/kg以下等 まとめ以上、今回はヒ素について考えてまいりました。ヒ素という金属はその用途からもわかるように非常に強い毒性を持つ金属であることから、限定的な使用に限られております。その為に、使用する機会は極めて稀であると思われます。また、その毒性の強さから、水銀と並び非常に強く規制を受けている金属でもありますので、微小量であっても、基準値を超える恐れがありますので、可能な限りご使用を控えて頂ければと思います。参考文献>1) 化学大辞典 第1版 大木道則他 編 東京化学同人 発行 1989年10月2) カラー ルービン病理学-臨床医学への基盤-エマニュエル・ルービン 編 鈴木利光他 監訳 西村書店 発行 2007年11月3) 新・公害防止の技術と法規2009水質編ⅠⅡ公害防止の技術と法規編集委員会 編 (社)産業環境管理協会 発行 2009年1月4) 食品衛生小六法Ⅰ平成21年版 食品衛生研究会 編 新日本法規出版(株) 発行 平成20年9月5) 土壌環境基準 別表 http://www.env.go.jp/kijun/dt1.html6) BS EN71-3:1995 Safety of toys-Part3:Migration of certain elements 英国規格製品中の有害物質に起因する環境負荷の低減方策に関する調査検討報告書 平成17年7月環境省 (財)日本環境衛生センター http://www.env.go.jp/recycle/report/h17-02/index.html7) 新訂 労働衛生管理とデザイン・サンプリングの実務厚生労働省安全衛生部環境改善室 編 (社)日本作業環境測定協会 発行 平成15年11月8) 金属等を含む産業廃棄物に係る判定基準を定める省令 昭和48年2月17日 総理府令第5号http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S48/S48F03101000005.html